この身の在り方に厳しい眼差し
この三月十一日で東日本大震災から丸九年となる。地震・津波という自然の力の猛威、また、原発事故で明らかになった放射能汚染・被曝という目に見えない恐怖…。
NHK復興支援ソング「花は咲く」の中のこの歌詞は震災の痛みに立ち帰らすと共に、日々の生活に追われ流されて生きてしまうこの身の在り方に厳しい眼差しを注ぐものといえる。
葬儀で読み上げられた文章
先月、ある元高校教員の方の葬儀にお参りした。お手次のお寺である福井市の住職によって浄土真宗本願寺派(西本願寺)の儀式が執り行われた後、同僚だった人や教え子たち数人から短いメッセージが語られた。そして、最後にご本人が病床の中で書き残された次の文章が親族によって読み上げられた。
[前文略〕
私は昨年五月末、敦賀病院で、末期ガンの診断を受けました。ガンが「胆のう」をこえて全身に飛び出しており、医療の施しようがない状態でした。「死ぬまで放置かな」と思っていたところ、さにあらず、苦痛をやわらげるための入院を何度も繰り返し、高度の医療が施されました。自宅の時には、一日おきに介護士が訪問、身の回りの世話と症状を調べて、医師に伝える。更にそれを、市の社会福祉協議会のスタッフが患者の立場からフォローです。これらの対応にはびっくりしました。
戦争が終わったとき、焼け野原の中に立って願ったことは二つあります。一つは、「もう絶対に戦争をしない」。いま一つは、「人間が大切にされる国になってほしい」、です。
戦争の時は本当にひどかった。それが、憲法九条に守られた七十年の平和がこんなにもすばらしい医療を作り上げました。しかし、多くの分野があり、まだまだ不十分です。平和と医療、福祉はセットです。戦争になれば医療や福祉は崩壊です。皆さん、いつまでも平和をしっかりと守り、すべての分野で「人が大切にされる国」をつくりましょう。そんな国を皆さんとともに夢に描きながらお別れしたいと思います。
皆さん、どうもありがとうございました。最期に、皆さんのご健康とご多幸を祈ります。
また、残された老妻のことをよろしくお願いします。
さようなら
[真宗大谷派指月山西誓寺寺報「ルート8」221号から転載]
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