「東京五輪」基本コンセプトの1つ
開催を危ぶむ声が少なくなかった中で、いよいよ「東京五輪」が開幕する。今回の五輪には基本コンセプト(一貫して大事にされる考え方・視点)が3つある。その1つは〈多様性と調和〉。次のように発信されている。
――人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩。東京2020大会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする。
バラバラでいっしょ―差異(ちがい)を認める世界の発見―
アレッ、何かに似ていると感じた。そして、思い浮かんだのが1998年に本山(東本願寺)で厳修された蓮如上人五百回御遠忌に掲げられたテーマ。
バラバラでいっしょ―差異(ちがい)を認める世界の発見―
当時、真宗大谷派は大きく変わろうとしていた。3年前に宗議会(僧侶代表者)・参議会(門徒代表者)両議会で不戦決議を採択。ハンセン病差別の問題に対して宗派として本格的に取り組み、国にモノ申していた。
自分が会社勤めを辞め、お寺に戻った時期に重なる。このようなテーマで広く社会に関わる、真剣に道を求めている先輩方から刺激を受け、希望と可能性を感じた。
もちろん、このテーマは日本語としておかしい、矛盾している、と批判する声もあった。しかし、ハンセン病からの回復者に「素敵ですね。気に入っています」と言われ、とても勇気づけられた。専門用語を振り回すのではなく、一般的に使われる言葉で仏教を言い当てることは簡単ではないが、求められているのだろう。
人間を生かす世界に立ち帰る
バラバラとは多様性であり、自由ともいえる。また、いっしょとは調和であり、平等ともいえる。自由でありかつ平等が成り立つ世界とは、人間より広い仏の世界=浄土のこと。それは本来人間を生かす世界、生きる力を届けてくれる世界だ。ところが、明治維新を経て、戦争へと突き進んだ時代の中、親鸞が説いた生きてはたらく世界は閉ざされて、死後の世界へと狭く変質してしまった。この意味で、戦争責任という大きな過ちに向き合い、深く懺悔し、親鸞に立ち帰ろう、歩み直そうと促すメッセージでもあった。
新型コロナワクチン接種への不安
新型コロナワクチン接種券が届いた。従来とは全く異なるタイプのワクチン。本当に接種していいものなのだろうか。政府やマスコミ情報だけではこの不安は解消しない。ネットで調べてみる。すると、陰謀論や新興宗教、国粋主義者のあやしい情報が飛び交っている。
そこで、親しい住職に相談。副業が翻訳で分子生物学や薬学関係の論文の仕事も多いらしく、事情に詳しい。いろいろと教えていただき、寺報やワクチンについて整理された資料を賜った。
「正義中毒」ではなく優しさとユーモアを!
その中で特に目についた指摘が、「正義中毒」の危険性。「自分のほうが絶対正しい」と、バラバラであることを認めない態度が増殖している風潮を心配する。
これに対して、コロナ対策が評価されている国、ニュージーランドのリーダーが発した言葉を紹介。私たちが困難な状況下でもいっしょに生きていくために必要なのは、優しさとユーモアではないかと綴られている。
首相: どうか強く、優しくなってください。
警察:ただテレビの前で寝っ転がっているだけで、人類を救えます。
[真宗大谷派西誓寺寺報「ルート8」236号から転載〕
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