世間をこえる

サッカーワールドカップもう一つの闘い

サッカーワールドカップはアルゼンチンの三回目の優勝で幕を閉じた。サッカー好きなので、この一カ月は深夜観戦が続き慢性的寝不足。また日本代表の試合がある時はそちらに気持ちが振れてしまい、やるべきことがあってもなかなか進まない状況に陥ってしまった。 

そんな中で、印象に残った出来事がある。ドイツ対日本の試合前でのこと。集合写真を撮影する際に、ドイツ選手全員が手で口を覆った。別会場ではイングランド選手全員がキックオフ時に片膝立ちポーズをとった。どちらも抗議の意思表示。この大会を開催するための競技場建設などで非人道的な行為が重なり、六千五百人もの外国人労働者が亡くなっているらしい。

選手である前に人間である

サッカー競技以外のことを考えていたから、本来の集中力を欠いてドイツは日本に敗れてしまった。そう批判されるかもしれない。サッカー選手は勝つか負けるか、強いか弱いかだけで評価される―それが〈日ごろのこころ〉であり、世間の価値観と言える。

でも、スポーツで稼ぐ職業人である以前に誰もが一人の人間である。だから、人間として生きていることの尊さ・重さに向き合い、その意味を常に問い続けることは、職業人としての深さや広さが養われることでもある。

日本代表は今回もベスト8の壁にぶち当たってしまった。どうすればこの壁を乗りこえることができるだろうか…。という議論が熱心に交わされている。もう一つの壁を指摘したい。職業人は自職に関わることだけやっていればいい!世の中のことには口を出すな!という〈日ごろのこころ〉である。そんな世間をこえて生きよ!という力強いメッセージが欧州のスポーツ選手から発信されている。

[真宗大谷派西誓寺寺報「ルート8」252号から転載]

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