NHK朝ドラ脚本家の問題意識
先月まで放送されていたNHK朝の連続テレビ小説(朝ドラ)『虎に翼』。日本で初めて女性弁護士になり家庭裁判所所長も務めた主人公を描いた作品は、女性差別・朝鮮人差別・LGBTQ・原爆の問題など重量級課題にも鋭く切り込み、高く評価された。
脚本は吉田恵里香さん(三十六歳)。新聞インタビューで社会的弱者に注目する問題意識はどこからくるのか、と問われ、紹介したのが十代の時に聞いた宇多田ヒカル作『誰かの願いが叶うころ』。=掲示板の言葉=〈みんなの願いは同時には叶わない〉と歌詞は続く。
声を上げていいんだよ
吉田さんは、脚光が当たらない人も含め、誰ひとり取りこぼさないという思いを大切にしているという。
これまでも、「物言う可愛げのない人」を描いてきました。そういう人が肯定される世の中なら主人公に選ばなかったかもしれません。誰かを立てて三歩下がる女性や、母性にあふれて優等生で献身的な女性ばかりがよしとされていることが嫌だったんです。 いまは物言う人が責められて、ときには自己責任論で追い詰められることも。
特に女性が声を上げると、それを一部の男性が批判して、結局は不毛な「男性ⅴs女性」」の対立論に落とし込まれてしまう。
………本当に怒るべき対象は社会の構造なのに、そこになかなかたどり着けない。だからこそ、声を上げていくことの大事さを描きたいと考えました。
私自身がずっと怒っているんです。同じように、どうにかしたいと思いながら声を上げることに抵抗がある人も多いんじゃないかと感じていて、だから「声を上げていいんだよ」ということを示したい。声を上げなければ状況は変えられない。きっかけはドラマへの否定でもいいから、そこから議論することで、いつか扉が開いて何かが芽吹くんじゃないかと希望を込めています。
本年の報恩講
本年の報恩講、講師の講題は〈たすけとぐることきわめてありがたし〉。『歎異抄』第四章の言葉である。一月一日の能登半島地震以来、何度も現地に足を運んでいる講師は何をどう感じているのだろう。敦賀では地震の被害が小さくてよかった…との立場にとどまってしまうわれら。そんな日ごろの生活からは聞こえない声を聞き受け止める貴重な時としたい。
[真宗大谷派西誓寺寺報「ルート8」272号から転載]
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